俺様副社長のターゲット
「ちょっと大丈夫?飲みすぎないでよ。」


「平気だ。」


「そう?」



私はまた前に座る伊藤さんとの会話を楽しむが、隣に座る副社長の視線が気になる。



「副社長、そんなに見ないで。」


「見てない。」


「…………。」



私は大きく溜め息を吐いて、ワインに手を伸ばした。



「彼氏に会ってるか?」


「…………平日は忙しいので。でも週末には会いますから。」


「ふ~ん、週末だけか。なら、俺の方が会ってるな?」


「…………私は副社長の秘書ですから。当たり前でしょ。」


「そうやって離れて別れろ。」



隣に座る尚輝を見れば、じっと私を見つめていた。



「早く別れろよ、朱里。」



間近で見る尚輝は見惚れるぐらい格好いい。でも格好いいから私は嫌な想いをした。


尚輝から視線を逸らして、ゴクゴクとワインを一気に喉に流し込んだ。



「おい、朱里。大丈夫か?」


「大丈夫。」



空になったワイングラスを見つめた。
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