俺様副社長のターゲット
結局、尚輝の思い通りだ。



「朱里、怒ってるのか?」


「尚輝先輩の強引さに呆れてるの。」


「旨い物食わせてやるから、機嫌を直せ。」



尚輝が楽しそうに笑っている。私は大きな溜め息を吐いた。



「昨日、尚輝先輩が煌太を挑発するから大変だったんだよ。」


「彼氏、怒ってたか?」


「初めて見た。あんなに怒った煌太を。」



尚輝の視線がチラリと向けられ、また前を向いて運転をした。



「大丈夫だったか?」


「あんまり。副社長とは二人で出掛けるな、毎日俺のマンションに来いって。」


「毎日?」


「私、疲れて倒れるかも。」



尚輝が黙りこんだ。私はもう一度大きな溜め息を吐いた。



「何かされたら連絡しろよ。」


「何かされたらって……。大丈夫だよ。」


「普段、怒らない奴が怒ると何をするか分からないからな。」


「………大丈夫だよ。」



私は自分にも言い聞かせるよう囁いた。
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