夢の言葉と虹の架け橋【夢の言葉続編①】
「うっせぇなぁ。
一度見せられた台本だけで出来る訳ねぇだろッ…!」
少年は演技から一気に素に戻って、
リディアさんにそう言い放つとプイッとそっぽを向いた。
!……なん、だって?
一度見せられただけの、台本?っ……。
僕はあの舞台を何十回も観た。
元になった話も知っているから、台詞もほとんど覚えている。
それでも、完璧じゃない。
なのに、
あのヴァロンと呼ばれた少年は…。
台詞を覚えて、
状況を自分なりに想像して解釈して…演じていた?
あんなに難しい恋話を。
年齢も自分とは全く違う、大人の男性役を…?
今思い出してもゾクゾクする。
演技をしている少年、ヴァロン君の姿に…。
気付いたら、
僕はヴァロン君の元に足を進めていた。