スーパー丸尾ブラザーズ
そして文化祭の合唱コンクール当日。

体育館のステージの袖からクラスのみんなが列をなして入場し、ひな壇に整列する。

ピアノと指揮台はステージのすぐ下に設置してあり、伴奏者の怜香に続き、俺も位置についた。


指揮台に登りステージに背を向けて、観客に一礼する。

拍手を受けてからステージに向き直り、クラスのみんな、ひとりひとりの顔を見渡す。

最後にピアノの方を向いたら、怜香が小さく頷いてくれた。


俺は指揮の構えをとってから、優しくその腕を振り下ろした。


ピアノのメロディーが柔らかく流れる。前奏では指揮はふらず、怜香に任せてある。

最初は女声のユニゾンだ。腕を柔らかく使ってリードしていく。

そこに男声の支えが入る。右腕を伸ばして、響かせる。


サビに向かってクレッシェンドしていく。
音を前へ前へ飛ばすんだ……!


演奏がサビに入った途端、俺はぶわっと鳥肌が立った。

クラスが一つになる感覚を味わったんだ。みんなが俺の方を向いて、笑いながら歌っている。

それに応えるように、俺はクラス全員と一人ずつ目を合わせながら、心に刻んでいくように指揮を振った。

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