スーパー丸尾ブラザーズ
2年生になってからももちろんその習慣は変わらない。

……いや、少しだけ変化した。


始業式から一週間も経たない頃。神社の階段のふもとには、俺の他にもう一台自転車が置いてあった。

気にはなりつつもベンチに向かう。


やっぱり先客がいた。

後ろ姿ですぐに女の子だってわかり、引き返そうかと思った。でもよく見ると西条高校の制服を着ている。

それどころか見たことのある後ろ姿だった。


「……おはよ、澤口さん」

緊張しながら後ろから声をかけた。

「えっ!?あっ、おはよう……」


彼女の名前は澤口衣里(さわぐちえり)。今は別のクラスだが、1年生の時に同じクラスだった。

眼鏡をかけて髪の毛を耳の下で2つにくくっている。

美術部に所属している彼女はクラスでもおとなしく、俺は同じクラスだった去年の一年間、まともに彼女と話した記憶はない。


それでも後ろ姿で彼女に気づいたのは、俺が彼女の後ろの席になったことがあったからだ。


声をかけるかは迷ったが、今このままスルーしてしまうと俺がこの場所に来にくくなる気がした。それに話しかけたところで害もなさそう。


「家、この辺りじゃないよね?」

この辺りだったら俺と同じ岬中学に通っていたはずだ。


「先月、父親が家を建てて……」

「あ、もしかして5丁目の?」


俺の家は2丁目だけど、この辺りは昔から住んでいる場所だ。新しい建物が建つとすぐにわかる。

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