スーパー丸尾ブラザーズ
「そういえば史弥はこんなことも言ってたな」

『郁は何でも一人でできちゃうから、オレのことは頼ってくれないんだ。

このままだといつかオレは、郁に抜かれてしまうのかな』


兄ちゃんは小学生の頃に、一度だけ父さんに愚痴ったことがあったらしい。

長男のプライドもあっただろうと父さんは言った。


確かに俺も、兄ちゃんだけには絶対に頼りたくなかった。

それは兄ちゃんに迷惑をかけたくなかったからではない。


俺は俺でプライドを持っていたんだ。

祥平や名菜に対して、俺も兄ちゃんなんだよってことをわかってもらいたかった。


「史弥はお前が頼ってくれなかったってことが、ずっと不安だったんだよ。

だけどここが不思議でな、逆にあいつはそれでもお前のことは頼ってしまうとも言っていたんだ。


だから尚更焦ったんだな。

自分よりお前のほうが兄貴にふさわしいって思ったから」


俺が祥平達に頼ってほしいと思っていたように、兄ちゃんも俺に対して同じことを思っていたんだ。


「つまり父さんは、そうやって兄妹仲良くして、大人になってみんなでおいしいお酒が飲みたいんだよ」

「……はいはいお父さん、飲みすぎよ。もう寝ましょうね」


真っ赤になった父さんは、母さんからレッドカードをくらって退場させられた。

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