俺様女装生徒会長と毒舌会計がいる日常
「そういえば、そちらの方はどなたですか」
実は教室に入ったときから気になっていたのですが、生徒会室には生徒会長以外にもう一人、人がいたのです。四角く並べられた窓側の机に、茶髪の男子生徒が座っています。わたしが教室に入ってからずっと手元のパソコンに目を落としたままで、こちらには一切興味を示してくれませんが。手は動いているので人形ではないでしょう。
「こいつはこの前紹介したうちの会計担当だ。雪崎、挨拶しておけ」
名前を呼ばれた雪崎さんは、初めてパソコンから視線を外し私を視界にいれました。
これが私と彼のファーストコンタクトです。しばし沈黙のときが流れます。
「会計担当綾瀬雪崎(あやせ ゆき)。よろしく」
初めて聞いた彼の声は幼さの残っているかわいらしい顔によく合うかわいらしい声でしたが、言葉からは言い表すことのできない冷たさが含まれていました。それを証拠に彼は不機嫌極まりないといったような表情で、頼まれたから挨拶しましたが何か? というオーラをぶんぶん振りまいています。
会長の話を聞いて苦労人なんだろうとは思っていましたが、どうやら彼は彼で変わった個性をお持ちのようです。
「青井小鳥です。こちらこそよろしくお願いします」
軽く頭を下げて見ましたが、顔をあげた次の瞬間にはもう彼の視線はパソコンのディスプレイに向けられていました。礼儀がないというより、徹底して人に興味がないようです。会長はわたしが彼に似ているといっていましたが、わたしは周りからこんな風に見えているのでしょうか?……否定できない気もします。