好きだと思うんですがっ!?
それどころじゃなかったっていうのもあるけど、あたしはすっかり星野くんを枕にしているって事を忘れてた。
彼に寄り添うようにして寝ていたって事にも驚きだけど、そんなのは他の出来事に比べればスズメの涙だ。
だから体勢も変えず、起きてからもずっと彼に体を預けたままだった。
どーりで、車内の視線がいつまでも痛いハズだ……。
あたしはむくりと体勢を整え、抱きしめていたバックを肩から下げる。
「ごめん、星野くんを枕にしてたね。とても寝心地の良い枕でした。テンピュールかと思ったよ」
「それは良かった。俺はブタの重さを痛感する瞬間だった」
「相変わらず星野 奏太は酷い奴だな!」
「ははっ、冗談だって。ほら、電車止まったぞ」
星野くんがそう言った時、電車の扉が開いた。
まるで早く降りろよ、とでも言われてるみたいに。
「じゃあね、星野くん。今日はありがとう。そしてゴチでした」
あたしはぺこりとお辞儀をしてから、くるりと体を反転させて戸口へと向かった。