好きだと思うんですがっ!?
「浮田」
あたしの足がホームのコンクリートを踏んだ瞬間だった。
星野くんは首の後ろを掻きながら、あたしの名前を呼んだ。
「ん?」
あたしはホームに立って星野くんと見つめ合う。
「あー……」
なんだろ? わざわざ引き止めておいて、星野くんの口はもごついている。
それは言いにくい事を言おうとする時の動きに似てる。
「なに? どうかしたの?」
あたしが助け舟を出して、やっと口を開いた言葉は、なんて事のないもの。
「帰ってちゃんと寝ろよ」
……あなたは、お父さんですか?
そう思った言葉は胸の内にしまって、星野くんににっこり微笑んで手を振った。
「うん、ありがと。そーするよ」
すると、ホームに鳴り響く音楽。もうすぐ電車が出発する合図だ。
それを受けて、あたしの目の前にある扉が閉まった。
「浮田」
って言葉が、その扉から滑り出るようにしてあたしの元へと届く。
扉が閉まる直前に、星野くんが放った言葉だった。