好きだと思うんですがっ!?
距離
「浮田さん、大丈夫?」
不思議そうな顔で覗きこんで来るのは古柳くん。
「えっ? あっ、ごめん。何か言った?」
「心ここにあらず、って感じだね」
古柳くんはそう言って、苦笑いを零した。
彼が苦笑いするのも無理はない。なにせこうやって声をかけられるのはもう5回目だ。
さすがにあたしは肩を小さくして、申し訳なく目を伏せた。
「なにかあった?」
「ううん、なにも。昨日遅くまでテレビ見ちゃってそのせいで頭がボーッとしてるみたい。ごめんね」
なんて、嘘だ。寝不足には変わりないけど、テレビを見てたせいなんかじゃない。
昨日は早く布団に入ったにも関わらず、星野くんの事が気になってなかなか寝付けなかったせい。
「そっか、それならいいけど」
古柳くんは伸びをするように立ち上がって、手を差し出した。
「じゃあ目が醒めるように河川敷でも歩きに行こうか」
あたしは古柳くんの手を取って、立ち上がった。
その手を離そうとした時、彼は口を開いた。
「浮田さん、寒い? 手が凄く冷たいけど」
「ううん、大丈夫。手は冷たいけど心は燃えるようにあったかい人間だから」
「あははっ、そうなんだ」
古柳くんはそのままあたしの手を引いて歩きだした。
……ん? ちょっと待って。
手、繋ぎっぱなしですけど?
あたしはどうしたものかと思いつつ、離すタイミングを失って戸惑いながら彼の後ろをついて歩いた。