好きだと思うんですがっ!?
……古柳くんって、意外とグイグイ来るんだ。
それならハッキリ言わないと流されてしまう。そう思ってあたしは再び口を開く。
「でもさ、あたし……好きなひ」
「ストーップ!」
空いた片手をあたしの目の前にかざす。
手は握りしめたままで、再び彼はあたしと向き合った。
「待った待った。早いでしょ」
「何が?」
「何がって、俺の事フろうとしてるでしょ? まだ俺ちゃんと告白してないっていうのに酷いなぁ」
えっ? でもこれってあたし、すでに告白されてるよね?
「あたし、告白されてる訳じゃないの?」
「正式には、ね。だから勝手に俺の事振ったりしないでよ」
なにそれ。古柳くんの言い分よく分からない。
そもそも正式ってなに?
「物事にはタイミングってあると思うんだ。だからさ、もう少し猶予ちょうだい? このタイミングだなって思ったところで改めて告白させてよ。その時はどんな答えでも受け入れるからさ」
あたしの手をぎゅっと握りしめた古柳くんの手は、少しだけ汗ばんでいた。
手は冷えて冷たいのに、ジワリと汗ばむそれが、爽やかに微笑みかける彼の裏の顔なように感じられて、あたしはつい首を縦に振ってしまった。
普段は飄々(ひょうひょう)としているように見える彼の意外な一面を垣間見た気がして、あたしはその空気に飲まれてしまった。
それに、星野くんとは付き合ってないし。
そう思う気持ちもあったからかもしれない。
もしくは、あたしの気持ちが変わる事はない、そう思っていたからかもしれない。
でも、そう思えたのはこの日までだった。
ーー次の日学校へ行ったら、星野くんは同じバスケ部の女子と、付き合っていたから……。