好きだと思うんですがっ!?

「浮田さん」


名前を呼ばれてハッとした。沈んでいたらしい顔を上げてみると、そばにいたのは古柳くんだった。


「どうかした? 具合悪そうな顔してるけど」


あたしは静かに首を振った。


「大丈夫、ありがと」

「そっ、ならいいけど」


あたしがそう返答したにも関わらず、古柳くんは自分の席に戻ろうとはしない。

それどころか、空いてるあたしの前の席に勝手に座って、体をこちらに向けている。


「浮田さんの髪、サラッサラッだね」


そう言ってそっとあたしの髪に触れてくる。

首から上って絶対領域とでもいうのだろうか。普段なら触られると不快に感じるパーソナルスペース。

古柳くんに触られた時、ちょっとビクッとしてしまった。

突然だったからっていうのもあるのかもしれないけど、ちょっと居心地の悪さを感じる。

だけどさすがは古柳くん。あたしが微妙な反応を示したのを見逃さず、すぐに手を引っ込めてくれた。


そういえば、星野くんにもこの絶対領域を触られて不快に思った事がなかったなぁ。

頬を触られたりもしたのに。


もしかしたらあの地点で、あたしはすでに星野くんの事が好きだったのかもしれない……。


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