好きだと思うんですがっ!?
たったこれだけの理由で星野くんがあたしのことを好きなんだと思ってる訳じゃない。
むしろこれだけの理由なら勘違いの可能性だって大いにある。
というか、むしろ自意識過剰なヤツって思われても仕方がない。
でも、そうじゃないって言える理由は他にもあって、例えばーー。
「浮田、なぁ浮田 真依子(うきた まいこ)〜」
休み時間になるとこうして声をかけて来る星野くん。
「何か用? 星野くん」
「いや、何となく呼んでみただけ」
「なにそれ……」
呆れた様子で反転させた上半身を元に戻そうとしたら、星野くんは両手を頭の後ろで組みながら、さも楽しそうに笑った。
「なんか呼びやすいんだよなー、浮田の名前って。語呂合わせがいいのかなー?」
そんなの知んないよ。
語呂合わせがいいとしても、用もないのにいちいち呼ばないでほしいんだけど。
「星野くんって時々ついてけない事言うよね」
「何だよ、ついて来いよ浮田 真依子〜」
あたしの名前を呼んだだけで、なにも面白い話なんて繰り広げてもいないのに、星野くんは楽しそうにケラケラと笑っている。
……なんて幸せなヤツだ。
星野くんの笑顔は、どこか人なつこさがあって憎めない。
でもこんな風に星野くんが意味なく話しかける女子は、クラスの中でもあたしだけだと思う。