好きだと思うんですがっ!?
あたしのすぐ近くを勢い良く駆け抜けていく電車。
その勢いに、あたしのマッシュヘアが全て持っていかれる。
さっきまでじわりと汗ばんだ背中が一瞬で冷却され、背筋に嫌な感じのヒヤリとした汗が滴り落ちた。
「……大丈夫かよ」
その言葉には安堵のため息のようなものを感じる。
星野くんの体温を感じる距離。
あたしの腕を引いて抱き寄せてくれた星野くんはそっとあたしから目線を外し、後方にいる駅員さんに頭を下げた。
「こんなところでふざけてたら危ないじゃないか!」
「すみませんでした」
「ったく……」っていうまだ説教を言い足りないっていう駅員さんの声が遠のいていくのを感じながらも、あたしはずっと固まったまま。
星野くんの汗の匂いと制服から香る洗濯物の匂い。
そのどれもがあたしのドキドキとした心臓を落ち着かせては、また別のドキドキを奏でさせる。
「大丈夫か?」
もう一度そう聞いて、あたしの体を引き離した。
温もりが離れていくのを感じて、それを少し寂しいと思ったのはきっと、冬の寒さのせいだろう。
そう思う事にして、あたしは顔を上げた。