【超短編】それでも私達は

リハーサルの直前、部長からいろいろなアドバイスをもらった。

緊張して頭が真っ白にならないようにされるアドバイスは、いつもだったらとてもありがたいはずだった。

今はそのアドバイスすら不安と焦りを生み出すだけのものに成り変わっている。

先輩が普段と何ら変わりないから、余計に緊張が増してくる。

心臓が本当に口から飛び出るんじゃないかと思うほどだ。


それを見かねたらしいひとりの先輩が、

「妃奈月(ひなき)ちゃん、落ち着いてやろ?」

と言う。

「は、はい」

声が震える。心なしか先輩が困った顔をしているように見えた。

それを見たのか見ていないのか、同じパートの先輩が私の肩をたたいてこう言った。


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