アラビアンナイト
そして、ずいっと奏太の後ろから肩越しにこちらを覗いてきたのは、我が班の班長、真田君。
「高藤、なんかいつもと雰囲気が違うような気がする。風呂上がりだからか…ぶっ!」
真田君が話してるっていうのに、その口を奏太の手が無理矢理塞いだ。
「お前、あっち行ってろって…」
静かな声だけど、ほのかに怒りを含んでるように聞こえるのは私だけ?
「バーカ、真田。ちょっとは伊藤の気持ちを察してやれよ。今は高藤に近づくんじゃない」
さっきとは違う声が、真田君をたしなめるように言った。
それと同時に真田君が私の視界から消えた。
誰かに部屋の奥まで連れていかれたらしい。