アラビアンナイト


そして、返事のないまま手を引かれ、廊下の端にある非常階段の踊り場まで連れて来られた。


ここに来るまで誰にも会わなかったとはいえ、ずっと手を繋がれたままだからすっごく恥ずかしいんですけど…。

途中、ジェイクの半歩後ろを歩く形で、ふと見上げた彼の横顔。

自分より頭ひとつ分は背の高い彼の、整った横顔を斜め後ろから見上げながら、


なんだか以前にもこんな風に見上げたことがあるなぁ。
あの時はこんな風に再会するなんて微塵も思ってなかったけど…。


なんて考えて、今の状況の不思議さを実感してみた私。

ジェイクが私に会いたいって思わなければ、絶対に再会なんてしなかっただろうな。

そう思うと、彼の気持ちは素直に嬉しかったりする。

…なんてことをしみじみと思っている場合ではなかった!


非常階段の踊り場は廊下からも見えないし、みんなが使う階段とは反対側だから、もともと人気が全くない。


…しーん…


さっきの私のお願いは完全にスルーですね…。

立ち止まって向かい合う形になっても繋がれたままの手。

なんとなくそれを見つめるも、微動だにしないところをみると、そういうことなんだろう。

どうすることもできず、かといって未だにどういう顔をすればいいのかわからなくて、ただただジェイクが話すのをひたすら待った。
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