アラビアンナイト
「大丈夫?」
滑って立ち止まってしまった私の顔を、すぐ後ろから登ってきていた奏太が心配そうに覗き込んできた。
その思わぬ至近距離での出来事にびっくりして声がひっくり返りそうになった。
「だ、だ、大丈夫!!ちょっと滑ってびっくりしただけだから!」
「そう?ならいいけど」
少しだけ疑わしそうな目を向けられたけど、私が全力で大丈夫をアピールしたからか、なんとか信じてくれたらしい。
「ってか、奏太!!後ろがつかえちゃうから登ろう!」
大慌てで奏太の背を押しながら登ろうとしたのに、
「ん」
と短い返事の後、なぜかケガをしていない方の腕がぐっと引っ張り上げられた。
「へっ?奏太??」
「いいから先に登って。次にまた滑ったら、俺が後ろで受け止めてあげるから」
だから安心して登りな、って言いながら微笑んでくれた。