アラビアンナイト
鈍感なのか鋭いのかよく分からない人だけど、少なくとも彼女は誰かを陥れたりすることはないんじゃないかと思ったら、自分自身がすごく恥ずかしい人間に思えた。
だから、これは私なりの贖罪なのかもしれない。
高藤さんに直接謝るだけのちっぽけな勇気すらない、弱い私なりの…。
そう思うと戸惑いもなくなって。
「セリム君、少しだけいい?」
そう言う声にも少しだけ力が入る。
少しでも彼女の負った傷が癒えるように。
できれば彼女の純粋な恋心がジェイク君にきちんと届きますように。
そう思いながら昨夜の呼び出しの裏にはどんな策略があったのか。
昨夜のことで高藤さんが思わぬ心の傷を負っただろうということ。
それを元に、今日の山登りで、伊藤君が高藤さんに揺さぶりをかける手筈になっていたことなど。
知りうる限りのことを伝えた。