アラビアンナイト


私、セリム・ビン・ファイザル・ビン・サレムは、代々サウード家に仕える一族の1人としてこの世に生を受けた。

自分でいうのもなんだが、幼少の頃より文武ともに秀でていた私は、噂を聞きつけたサウード王直々の命で、王の第4王子であるジェイク様の世話役を仰せつかった。

初めてジェイク様にお目通りさせていただいたのは8年前だが、その時のことは、まるで昨日のことのように思い出せる。


今こそ留学先では同級生として振舞っているが、実年齢でいうと私はジェイク様より2歳年上だ。

当時10歳になったばかりの生意気盛りだった私は、自分が仕える王子が年下だと聞いて正直がっかりしていた。

私としては、その有能さが何かと噂になっていた自分より3歳年上の第3皇子ファイサル様のお側で、その有能さをさらに引き上げるような要職に就きたかったのだ。

だから、ジェイク様のことは完全に子供のお守りをする気持ちでその宮殿に足を踏み入れた。
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