アラビアンナイト


父に案内されてジェイク様の私室に向かった私は、部屋に入ってあっけにとられた。

何って、部屋にいるはずの王子がいないのだ。

『これだからチビっ子は困る。他人との約束を何だと思っているのだ。
いくら子供とはいえ王子なのだ。
せめて王子に相応しい言動や立ち居振る舞いをしてほしいものだ。
やれやれ、これは先が思いやられるな…』

王子がいない事に油断した私は、隣に並んで空っぽの部屋を見つめる父にそう言ったのだが…直後に自分の器の小ささを思い知らされる事になる。


『ふ〜ん、なるほどな。
ファイザルの息子は年下という理由だけで人を見下す傾向にある、と』

『だ、誰だ!?』

私と私の父以外、誰もいないと思っていた部屋なのに、突如聞こえた声に心底驚いた。

人の気配など、全くしなかったのに…!!
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