アラビアンナイト


……懐かしい…。

そう思いながら足を進めていると、前を歩いていた女生徒が歩く速度を緩めた。

そしてゆっくりと振り返ると、意を決したように話し始めた。

表情は終始こわばっていたが、話す内容は私が想像したものではなかった。

どうやら私の言葉が、ジェイク様お気に入りの娘を傷つけてしまったらしい。

戯れであの娘にちょっかいを出していらっしゃるのなら、なんの問題もないのだが、もし本気であの娘を想っていらっしゃるとしたらマズイな…。

見たところ、あの娘は遊びでジェイク様と男女の間柄になれるような類の人間ではないだろう。

だとすれば、私のせいであの娘がジェイク様との交際を拒否する可能性がある。

私の不用意な言葉のせいでジェイク様が小娘に振られるなど、どんな状況下でもあってはならぬこと!

お許しくださいジェイク様!!

これは私の命をもってしても償わねばならない大事件だ。

私は目の前の女生徒に礼を述べると、死を覚悟しながら足早にジェイク様の元へと馳せ参じた。
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