アラビアンナイト


『ジェイク様!!』

いつも冷静なセリムのただならぬ雰囲気。

俺はサオリを適当にあしらうと、彼女を先に行かせてセリムとともに人気のないところへ移動した。

『どうしたんだ、セリム。そんなに慌てて・・お前らしくもない』

そう声をかけると、いたって冷静な俺を前にして少し気持ちが落ち着いたのか、セリムは深呼吸を1つした。

『取り乱しまして、申し訳ありません。
ただ、場合によってはこの命、ジェイク様のお許しを得て神に差し出さねばならないと思いまして…』

思わず『はぁ?』と言いそうになったが、セリムの顔はいたって真剣で、大袈裟に言っているのではなさそうなので、その言葉はぐっと飲み込んだ。

どうしてそんなことを思うに至ったか知らないが、こいつは意外と旧タイプの考え方で…おそらくこいつの祖父の影響だろう…時々ものすごく時代錯誤なことを言うことがある。


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