アラビアンナイト
『っ!!』
セリムの反応を見るに、図星というところか。
まぁ、確かにセリムがそう思っていたとしても無理はない。
政治的な立場を考えるなら、たとえ王子といえども、なにかしら有益な関係を得られる家の娘を娶るべきだということは理解している。
それなのに、婚約者を決めてもいい年齢である12歳になった時、次々と持ち込まれる縁談を片っぱしから断ろうとした。
だが、流石にそれは許されず。
かといってどの縁談も受ける気になれなかった俺は、見聞を広めるという名目で諸外国への留学を繰り返すことで逃れることにした。
その辺りのあれこれについては結構な無茶をした自覚はある。
そして、その尻拭いにセリムを相当走り回らせた。
でも、それが、あのたったわずかな時間を共有した女の子のためだということは誰にも話したことがない。
『お前、来日する前は俺がありすにこだわる理由をただの気まぐれだと思っていただろう?
もちろん本気で好きなわけがないと思っていたはずだ。
ただ、実際にありすを目の前にした俺を見て、だんだん自信がなくなってきた。
そこに自分がきっかけで、ありすの心が傷つくような出来事が起こった。
だから慌てて俺のところへ来たんだろ?』
相手が俺だから、きっと言わずに我慢していたであろうことを、代わりに洗いざらい言ってやった。
『ジェイク様…』
セリムがなんとも言えない顔をして突っ立っている。