アラビアンナイト
『それは…俺もうまく話せる自信がない。
ありすのことがどうしてこんなに気になるのか…。
説明できるなら、俺が教えて欲しいくらいだ。
そうだな…心が囚われているとでもいうのかな』
うまく説明できない自分自身を嘲笑うような吐息と共にこぼれ落ちた言葉は、俺の偽らざる気持ちそのものだ。
『あとは…、もしかすると出会ったタイミングというのも大きいのかもしれない』
強いていうなれば、という出来事を頭で思い浮かべながらセリムに話した。
『出会ったタイミング、ですか?』
やや怪訝な顔をしながら俺の言葉をそのまま口にするセリム。
『そうだ。俺とありすが初めて会った時、すでに俺の側近だったはずのお前はどうして俺の側にいなかった?』
すると一瞬考えてすぐにハッとした顔になった。
『……ナファビル王子のクーデター未遂事件!』
『そうだ。第二王子であるナファビル。
俺の腹違いの兄による父と俺の暗殺未遂。
アレが関係するんだが…それでもだからどんなふうに、と聞かれたらうまく答えられる自信がないんだ…。
ただ、ありすがいなければ、俺は今生きていない、というのは確かだ』
俺の複雑な心のうちをセリムなりに慮ってくれたらしい。
『あの時、孤立無援となられたジェイクさまを救ったのが彼女だということなのですね…?』
『そうだ』
そこから一言も発しなくなったセリムに、
『まぁ、もうしばらくでいい。俺とありすのことは見守っていてくれ』
俺がそう言うと、セリムは無言で頭を下げた。
それは承諾の意であるので、正直ほっとした。