辛口ちゃん と 言葉足らずくん
帰路をたどって20分程。
すっかり身体が温まった頃、壁の塗装が剥がれかけた小さな建物が遠くに見える。
誰が見ても"ボロい"それは、私の生活の場。我が家だ。
「…クソババァ、今日もいない。」
まるで息をしていないかなような真っ暗な建物に、小さく舌打ちをした。そして当たり前のようにその建物の前を通り過ぎる。
私がブレーキを握ったのはすぐ隣に建つクリーム色の大きな家の前。
ピンポーン…
その大きな家の入り口、レンガの柱に取り付けられた最新型のインターフォンを押す。
「…はい」
少し間が開き、機械を通して聞こえたのは、いつもより少し掠れた甘い声だった。
「よっ」
「おー…入れよ」