できちゃった出産【ベリカフェ版】


 ただ、夫が子どもの成長に非常に関心をもっていることは確かです。誰よりも興味深く子どもの成長を見守っているのは彼でしょう。ちょっと独特ではあるけれど、楽しみを持って関われるというのは素晴らしいことだなぁと思います。たとえそこに、研究者としての興味がのっかっていたとしても(苦笑)

 夫は理知的な人です。そんな彼はこう断言します。「母性なんて幻想にすぎない」と。こう言い切ることには、私への配慮(優しさ)があるのかもしれません。でもやっぱり――おそらくまあ、彼の率直な考えなんだろうなと思います。

 世の男性の多くに言えることかもしれませんが、男性ってどこか母性に期待しているところがあると思うんですね。あるいは、甘えているところがあるというか。そりゃあまあねぇ、奥さんがいつもニコニコして「いいのいいの。赤ちゃん可愛いし好きでやってるから~」と湧き出る母性パワーでそつなく育児してくれてれば、男の人は楽でしょうよ。あ、ちょっと意地悪な言い方ですかね? すみません……。

 夫は母性を幻想だと言いますが、母性って確かに世の中に必要な「仕組み」みたいな側面があるのかも? なーんてちょっと思ったりする私です。

 夫の人柄に私はどれほど救われたことでしょう。夫はいわゆる「母親らしさ」を求めたりはしない人です。そのぶん私は苦しまずにすみました。夫の脳内がお花畑になっていたら、正直しんどかったでしょうね。その温度差が苦しかったことでしょう。

 親子のありかたは、親子の数だけあっていい。なんですかねぇ、ちょっとだけ「ま、いっか」と思えたんです(笑)夫のように「興味」を持って関心を払うという関わり方もアリなんだと(爆)

「興味深い」という言葉は非常に便利で、なおかつ素敵な言葉だと思うのです。妊娠・出産はそれこそ実に興味深い体験です。何しろ生命の「発生」から関わっちゃってますからね(発生させた張本人だっつうの・苦笑)。

 実験などという言い方はお叱りを受けてしまうかもしれませんが、こんなにも興味深いプロジェクトってないと思うんですね。こういった私の思考は、言うまでもなく夫の影響にほかなりません(笑)

 母性が幻想にすぎないのかどうかは……(苦笑)。ただ、母性が発動しないことは「欠陥」ではなく「違い」にすぎないのではないかと。そんなふうに思いたい私なのでした。

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