できちゃった出産【ベリカフェ版】
 心の問題ですからね。「こうあるべきだ」という理想のありかたを知っていても、そう簡単にその状態に最適化(?)できるわけではないのです。いっそ、心なんてなければ――「私」という心さえなければ、どんなに楽だろう? そう思うほど、どこか追い詰められていました。

 出産を終えたその夜、学生時代からの大の仲良しの友達にメールをしました。そして、なんとか無事に生まれたことと、自分の苦しい心境を正直に打ち明けたのです。すると、こんな返事がかえってきました。

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 メールありがとう。無事に生まれて本当によかった。なかなか生まれないから心配していたよ。ちさとちゃん、まさか赤ちゃんの誕生日を私の誕生日に合わせようとして頑張っているんじゃないかと思って(笑)

 出産の辛さや大変さは独身の私にはわかってあげられないのかもしれません。でもね、それでもやっぱり「おめでとう」と言わせて欲しいと思うのだよ。まずは自分の回復が大事だと思うから、休めるだけ休んで体を大事にしてね。

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 何を隠そう予定日を超過したことで、はからずして大の親友の誕生日と息子の誕生日が重なったのです。ちょっと運命的ですかね。或いは、息子の粋なはからいとでもいいましょうか(笑)

 それにしても、私の友達らしいメールだなと思いましたよ。決してむやみにハイテンションにならない(笑)そして、挨拶がわりのように「頑張れ、頑張れ♪」と励ましたりしない。

 なんていうのかなぁ、私、ちょっと許された気がしたんですよね……。こんな自分でも、親友は親友でいてくれる。味方として寄り添ってくれるのだと。まあねぇ「こんな自分」ってなんだよって話なんですけど。なにしろこのときは、精神的にも身体的にも、普通の状態じゃなかったですからねえ……(汗)。

 そしてそして、通常の状態にしっかり戻す間もなく次なるクエストに臨まざるを得ないのが、産後の育児というやつなのでした――。

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