できちゃった出産【ベリカフェ版】
 母親になるのって、ドラクエで言うところの「転職」でOKだと思うんですね。 前の職業のよいところを継承しつつ新しい職業に就く。僧侶が武道家になれば、回復呪文が使える武道家です。回復魔法の能力を捨てて武道家になるわけではありません。「出家」は何もかも捨てなきゃなりませんが、ドラクエの転職はそうじゃありませんから。

 私は怖かったんですよね、自分が母親になることが。人間の赤ん坊を可愛いと思えたことなんてなかったし。子どもを愛せなかったらどうしようと、怖くて怖くて仕方がなかったんですね。いっそ、胡散臭い宗教にころんと転べば楽だったのかもしれないのに、やっぱり染まれませんでしたし(苦笑)。

 怖さの正体は自信のなさだけでなく、自分を否定して自分を失うことへの戸惑いだったのかもしれません。自分を改造されることへの怖れとでもいいますか。まったく「やめろショ○カー」じゃあるまいし……(汗)。

 自分らしさを継承しつつ、母業に必要なスキルを身につける。母親になるのって、本来はこういうシンプルなことなんですよね。ただ、社会の古い常識や枠組みが「女性が自分らしく生きること」の妨げになっているのかもしれません。凝り固まった「女性らしさ」を良しとして、女性一人ひとりが持っている個人としての自分らしさを尊重しない社会というか。

 そりゃあね、女性が「個人」を返上して「母親」に徹してくれりゃあ、男性優位の世の中的にはウシシでしょうからねぇ(意地悪な言い方ですんません)。

 母親になるにあたって、どうしても諦めなければならないものがあるとすれば、それは――「子どもを持たない人生」でしょうか。当たり前のことですが、母親になるということは「母親にならない人生」と決別することですからねぇ。

 恋愛であれば別れてフリーに戻れます。結婚にしても、離婚をすれば独身に戻れます。でも、時間を巻き戻せない以上は子どもを身ごもる前には戻れませんものね……。

 母親になってみてわかったのは、母親になるためにむやみ自分を改造する必要はないということです。まあ、しようと思っても簡単にできることではないことを身につまされたわけですけどね。

よって、大切なことは必要最低限のスキルを身につけること。足りない部分は周りに助けを求めること。ぶっちゃけ、不足が出てあたりまえですから。それが出ないようにする努力も必要ですが、どちらかというと適切に支援を求めるアウトプットする技術のほうが大事かなぁと思います。

 え? 夫や息子の改造ですか? どうでしょうねぇ、余計にややこしいことになりそうなので(汗)とりあえず、このまま生温かく成り行きを見守りたいと思いますが……(笑)。


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