部屋に出るもの

奈々というのが女の名前だった。

あたしはもうなつみではなく、奈々だった。なつみの意識は、頭の片隅に残っているだけだ。

奈々が体を起こして、となりの布団へもぐりこんでいった。

しおりがそれを迎え入れた。

いや、しおりのもほうも、髪の長い女に乗りうつられたのだろう、今は志保という女になっていた。


「志保」

「奈々」


ふたりは熱い吐息をまじえて互いの名前を呼び合った。

ふたりが恋人どうしなのはよくわかった。

ふたりは抱きあい、互いの愛を確かめはじめた。それは幽体の身でいるときにはかなわないことだった。

攻めたのは奈々だった。志保の体を知りつくしていた。

志保は悦びにうちふるえ、すすり泣きをもらした。

志保の悦びは、奈々の悦びだった。


「志保、好きだよ、愛してる」

「ああっ、奈々、あたしもよ」


熱い肌を合わせ、ふたりはいくども官能の高みを極めたのだった。
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