部屋に出るもの
*
やがて空の白むころ、志保と奈々はどこかへ消えて、もとのあたしたちふたりが残された。
しおりはあたしの腕枕の中だった。
あたしは考えついたことをぶつけてみた。
「嘘だったんでしょ、妹さんがなにも覚えていないって言ったことも、それから、あなたがなにも覚えていなかったってことも」
あたしの口調にとげを感じたのか、しおりは、ごめん、と謝り、言葉を続けた。
「でも、違うの。妹は本当になにも覚えていなかった。あたしとあんなことをしたのに。
あたしのほうは覚えていた。そして、あの幽霊を利用して、なつみを呼んだの。
昔から、あたし、なつみとこういう関係になりたかったから」
しおりは身じろぎして、あたしの顔を見上げた。
「ごめんね。軽蔑する?」
「ううん」
あたしはしおりの髪をなでた。
とても柔らかい髪だった。
ふたりはもう友だちにもどれない。
これからどうしようか、とあたしは考えるのだった。
〈了〉