私の秘密の婚約者
こんなことになるなら誠に迎えに来てもらえばよかった…でも、もう遅い。
そのように感慨に耽っていると急激に胸元の解放感を感じた。
『やめてっ!!』
私は必死に抵抗するがビクともしない。
『莉音、恥ずかしがらなくていいよ』
『離して!!』
ビクとも動かなくても、これだけ叫べば誰かが気付いてくれるはずだ。
『莉音!!』
『誠!!』
『てめぇ、莉音に何やってんだ』
誠は既にお怒りモードだ。
『君こそ誰なんだ?僕と莉音の二人だけの世界を作っていたのに邪魔しないでくれるかな』
私は先輩の注意が誠に向いている隙に携帯電話を取り出し、動画を録る。
『同意の上なら邪魔しないさ。でも、莉音は拒否していただろ。泣いているし震えている。どこからどう見ても同意してねぇだろ』
『そんなわけない!莉音は僕に振り向いてほしくてバイトを辞めるほど僕のことが好きなんだよ!』
『違う!私が好きなのは誠だけなの!コンビニのバイトを辞めたのだって誠との時間をもっと作りたかったから辞めたの!』
私はそう叫んで、その場にうずくまるしか出来なかった。
『そんなわけ…あるはずがない…ねぇ、莉音。あの男に脅されてそう言っているんだよね?』
先輩は私に近付こうとするが誠がそれを許さない。
『これ以上、莉音に近づくな』
『くそっ』
先輩は悔しそうな表情をしてその場を立ち去っていった。

【現在】
先輩は私に触れようとするがそれは飯田さんによって阻まれた。
『お前、莉音ちゃんが嫌がっているのが分からないのか?』
『貴方には関係ない』
私は恐怖を感じ、体を縮こまらせた。
『莉音、どうかしたの?』
店の様子に違和感を感じたであろう麻子さんが奥から出てきたが、直ぐに表情が一変する。
『あんた、莉音のストーカーだね。最近、店の周りをうろついていたみたいだけど』
『ストーカー?酷いなぁ。僕は莉音の彼氏だ』
『違う!あなたとなんて付き合ってない!私には誠だけなの!』
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