秘め恋*story10~兄の部屋で…~
「そんな事よりさぁ。」
「ん~?」
「お前、あいつ覚えてるか?
橘 周平(タチバナ シュウヘイ)。」
兄の言った名前に一瞬頭を巡らせるも、一瞬で思い出す。
「覚えてるよ。お兄ちゃんの中学、高校の同級生でしょ?確か、あのイケメンだけど性格が残念で彼女が出来ないって言ってた人。」
「そうそう、その残念なイケメンの人。」
「よく学校の後、うちに遊びに来てたよね。
たまに私いじられたから、覚えてる。
その人がどうかした?」
私がそう聞いた時、玄関のチャイムがなった。
“よっこらしょ”のかけ声と共に立ち上がった兄が玄関へ出ていった。
どうせまたお母さんの頼んだダイエット器具の宅配でしょ?
私は気にせず、ソファーに寝転んだまま漫画を読んでいた。
すると、何やら玄関の方からリビングの方へ話し声が近づいてきた。
「お、チビ子がいる。」
ん?
何か聞き覚えのあるその呼び名…
振り向くと、そこにはやっぱり…
小学生だった私を“チビ子”と呼んでいた奴が一人いた。
それが…
「げっ…」
「久しぶりだな、チビ子。」
そう、数年見ない内に大人の男になっていた
“残念なイケメン”がいた。