秘め恋*story10~兄の部屋で…~
――――――……
「莉子ちゃんて、彼氏とかいる?」
「え、いないよ?」
「ホント?可愛いから、絶対彼氏いると思ったんだけど」
「えー、そんな事ないよ。」
うわぁー、悶え死にそう。
可愛いとか、初めて言われたよーー。
今日、遊びに来て良かったぁーー!
「コウタくんこそ、絶対モテるでしょ?」
「男子校だよ?モテたら、大変だよ。」
「あはは、そっか。」
ナナの彼氏の友達で、コウタくん。
一個上で爽やかで背が高くて、話しやすくてちょっと面白い。
私の好きなタイプど真ん中!
もしかしたら、もしかしちゃうかも??
「莉子ちゃん、駅まで送るよ。」
「え、ホント?ありがとう。優しいね。」
駅までコウタくんに送ってもらって、別れ際にはLINEを交換して…
「じゃあ、また遊ぼうね。」
「うん、今日ホントに楽しかった!」
手を振って私を見送ってくれるコウタくんに手を振り返しながら、私の心の中ではもうすでに恋へのカウントダウンが始まっていた。
ふふふ、コウタくんと付き合うことになったらどうしよう。
えっと、毎日学校帰りに待ち合わせして………―――
「おーい、チビ子。」
ん…
私のドキドキを邪魔する声が後ろから聞こえてきた。
「げ。」
「今から帰るんだろ?一緒に帰ろーぜ。」
「ひとりで帰る。」
「ふーん。」
一緒に帰る気は更々ない私は、ひとりホームへと歩き出した。
それでも、しれっと同居人は後ろをついてきた。
そのまま、電車の中でもしれっと隣に座ってきた。
一言も喋らないまま、二駅過ぎた頃…
「…なぁ、」
「…何?」
「さっき一緒にいた奴、彼氏か?」
突然話しかけてきたと思ったら、思わぬ質問に私はビックリして隣を見る。
隣の同居人は、座席にもたれながらただ前を見ていた。
「別に、今日一緒に遊んでた友達。」
「ふーん……さっきの男のこと、好きなの?」
「……!別に、何でもいいでしょっ。
というか、何でそんな事聞いてくるのっ?」
「…ん、気になるから。」
「…は?何で?」
「・・・」
返答がない。
隣を見ると、さっきの体勢のまま居眠りが始まっていた。
寝てるし!意味わかんない!