溺愛されてもわからない!

たい焼き屋さんの前に行くと
水無月君がガラス拭きしてお掃除中。

ジーンズにチェックのシャツ
青いエプロンに赤い髪
シルバーのイヤホンを耳にかけてる。

教室ではドスンと机に座って
無言で音楽聴いてるイメージなのに
丁寧にガラスを拭いてる姿にキュン。

ぼーっとして立ってる私に水無月君は気付き
イヤホン外して
先に声をかけてきた。

「転校生。昨日はありがとう」

「ううん。おばあさんはどう?」

「昨日すぐ病院連れてったら軽いネンザだった。大丈夫」

「よかったね」

「ふたりのおかげだ。ありがとう」

私の目を見て
しっかり言ってくれた。
一重できりっとした目は澄んでいる。

「こっちこそ。昨日はごちそうさまでした。すごく美味しかった」

「また食べる?ばぁちゃん焼いたのあるし」

「いいよいいよ」
ブンブンと首を横に振る。
そんな申し訳ない。

「俺も休憩しようと思ってたから、ちょっと待ってて」

私の返事を聞くまでもなく
水無月君はそう言って店の中に入り、すぐペットボトルのお茶と熱々たい焼きを持って来てくれた。

「座るか」

店先に出ている小さなベンチにツーショット。

いいのか?こんな幸せな展開。
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