溺愛されてもわからない!

「真っ暗で銃の手入れって、無理でしょう」

うわぁ
これが本物の拳銃ってヤツ?
思ったより小さい。

テーブルの上の物をジッと見てたら、田中さんが素早く内ポケットに隠す。

「照明がない場所での仕事もありますので、いつどんな時でも的確に対処できるようにしなければいけません」

わかったような
わかんないような。

「和彦さんと打ち合わせですか?」

「はい。今は椿姐さんと明日の用意をしております。それからこちらに来て打ち合わせです」

「たいへんですねー」
留守番させられるので
私の言葉に心はない。

私も連れて行って下さいっ!

「絶対に失敗できない顔合わせなので……」
遠い目をする金髪ライオンさん。
若頭の田中さんも大変だよねー。

「私はココアでも飲もうかと思いまして、田中さんも飲む?」

「自分が入れましょう」

「いや。いいですいいです」

24時間休み無しの田中さんに、そこまでやらせられません。

私はマグカップをふたつ手にすると、背中で田中さんがしみじみとした声を出した。

「すみれさん。一夜さんをよろしくお願いします」

たなかーーーー!
あんたまでかいーーっ!





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