溺愛されてもわからない!
「椿さんから頼まれた」
「お母さんから?」
お母さんの名前を出されて
身体の緊張が解ける。
「そう『留守の間、すみれをお願いします』って」
一夜は軽く私にデコピン。
ちょっと痛くて顔をしかめる。
「『すみれは強気に見えるけど、本当は寂しがり屋なの。私達が留守の間、すみれをお願いします』ってさ」
強気に見えるけど寂しがり屋
一夜と同じ?
お母さん
一夜にお願いしてたんだ。知らなかった。
「そんな事言われたら、手を出したくても出せないだろ」
「私も頼まれたよ。月夜と田中さんと和彦さんに」
「え?何て?」
その表情が素だったから
何か私は嬉しくなって「教えない」って答えてやったら、再びのデコピン。
「遊びに行かないように見張ってろとか?」
「だから内緒」
「はいはい」
一夜は笑って私を解放する。
「だから僕を信頼して。いつの日か手は出すと思うけど、今は出さないから」
「そう言われると……」
「何?」
「あの……」
そして玄関からチャイムの音。
信頼……してない私をお許し下さいお義兄様。