溺愛されてもわからない!
一夜はもう一度
そこにいるのが夢君だと確認してからドアを開ける。
「あいかわらずデカい家だな」
黒のジャージの上下を着た夢君は背中にリュックを背負い、キョロキョロと辺りを見回して一夜にそう言ってすぐ靴を脱いだ。そして私に「来たよ」って頭ぽんぽんしてから、自分の家のようにスタスタと居間へと歩き出す。
頭ぽんぽんされちゃった……じゃなくて!
振り返ると無表情の一夜。
もう少し説明をしようと思ったけど
夢君の行動の方が速かった。
「この大画面でゲームしてたの思い出す」
はしゃぐ夢君は自分の家のようにソファにドスリと座る。
堂々としてるなぁ。やっぱりカッコいい。
「すみれちゃんから説明されてないんだけど、どーゆーこと?」
腕を組んで仁王立ちの一夜に負けず
夢君はしれっとしてる。
「すみれがさ『今日は一夜とふたりっきりで襲われたら困るから、泊まりに来て欲しいって』言われて」
言ってないです!
言いたかったけど言ってないです!
上手くごまかしたつもりだけれど
私の顔に書いてたかな。
「ふーん」
一夜の綺麗な怖い顔は崩れない。