溺愛されてもわからない!
「すみれはガードゆるくて心配だ」
「私?」えっ?私が?
「こっちは田舎と違う。ずっと住んでた町は小さくてコミュニケーションが取れてたろ。こっちは違う。悪いヤツも沢山いるのを忘れるな」
出会った頃と同じ顔。
厳しい表情で私に言う。
「でも、みんないい人だよ」
「みんなとは限らない。人を簡単に信用するなよ」
しっかり説教されてる私。
「簡単に俺を誘ったりするな」
「ごめん迷惑だったね」
「いや、そーじゃなくて」
夢君は何かイラついたように声を荒げる。
私は夢君を見上げて次の言葉を待つけれど
夢君は口を開かず私をジッと見つめていた。
「自分でもわからない。すみれを襲いたいのか、守りたいのか……よくわからなくて……とまどってる」
「夢君」
「ただ思うのは、すみれば無防備だ。きっと悪いヤツが弱い素振りで近よって『ちょっと手を貸してもらえますか?』とか言われてホイホイ手伝って、そのままワンボックスカーに連れ込まれるタイプ」
「そんな事ないよ。私は運動神経もいいし強いから大丈夫」
「人間本当に怖い時って、声も出ないって知ってる?」
「……知らない」
「叫び声なんて簡単に出ない。だから人を信用しすぎないで自分の身は自分で守ってほしい」
「……うん」
うん……しか言えない。