溺愛されてもわからない!
「それは一夜も心配してる」
「注意する」
「それでよし。ここでいいよ、もう帰れ」
昔ながらの商店街に入る手前で
夢君は私にそう言う。
「いいか」
背の高い夢君が背中を丸め
背の低い私の目線に合わせ
ジッと目を見る。
切れ長の目が綺麗。
赤い髪がふさふさしてる。
ライオンさんの赤い髪。
「無防備になるのは、俺の目の前だけにしろ」
「夢君」
「それは俺だけに見せる顔でいい。わかったな」
「はい」
「よし、帰って寝る。寝不足」
「枕が合わなかった?」
「ばーか。気になる女の子が隣で寝てるんだぞ、寝れるワケないじゃん」
サラッと笑って言い残し
夢君は私の前から走り去る。
赤い髪が揺れてる。
気になる女の子
私……かな。
木枯らしの冷たさを忘れ
足元に舞う枯葉がハートに見えた朝だった。