溺愛されてもわからない!

キラキラしてる

ここ?どこ?何?髪を切る場所じゃないよね。
何のお店?
床もピカピカ。天井は高く。
圧倒されるぐらい綺麗な人がいっぱい。

「一夜さん。いらっしゃい」

「イシイさん、すいません無理言って」

一夜の元にやってきたのは
黒いカフェエプロン姿の長い髪をした男性。

「義妹なんだ。可愛くして」

「はい。おまかせ」

イシイさんは「どうぞ」って案内して、私を広いフロアに連れ出した。不安で一夜をすがるように見るけれど、一夜は「西高はカラーもパーマもいいんだろう。好きにしてもらったらいいよ。僕は他の用事があるから」って放置されてしまった。

あああああっ!
放置しないでっ!
タヌキをひとりにしないでっ!
やっとスタバに入れるようになって、マンゴーパッションティーフラペ……あれ?フラぺ……なんちゃらって言えるようになった段階で、まだこんなキラキラしてる場所はひとりじゃ無理!

振り返っても一夜はもういない。
イシイさんに案内されて
ズラーッと並んでいるキラキラした鏡の前に座って、両端の綺麗なお姉さん達の間に入って固まる。

「カット?カラーとかパーマは?」

若いお兄さんに髪を触られるのは初めてで緊張MAX。

するとイシイさんは「肩の力を抜いて」ってポンと私の肩を叩く。

「可愛くするから大丈夫」って言ってくれて

鏡の中の不安そうな自分とハサミを握って笑顔のイシイさん。

可愛く……なりたい。
なれるものなら……なってみたい。


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