溺愛されてもわからない!

キョロキョロと周りを見渡すと

「とろいんだよブス。田舎に帰れバカ」

間違いなく
私の正面の男の子がそう言った。

「俺は認めねーからな。テメーもテメーの母親もよ」

なにこれ?まぼろし?
こんな可愛い天使のような男の子が
こんなに悪い言葉を使うか?

しかも
嫌われてるし私。

出てけって言われてるし。

「月夜君。あの……」

「馴れ馴れしく俺の名前を呼ぶな」

って
舌打ちして
クルリと私の前から去ろうとしている。

幼稚園児に舌打ちされる私って……。

でも
ここで負けてなるものか!

「ねぇ月夜君」

私はしつこく追いかけ、小さな肩をつかむと

「俺に触るな。俺の背中に立つな!」

怒られてしまった。

お前は何ものだよ。

「ごめんなさい。あの、月夜君に兄弟がいるって聞いたから。和彦さんにはふたり男の子がいるって聞いてたの。だから、もう1人の男の子に挨拶したいと思って」

ひざを着いて目線を合わせ
低姿勢で幼稚園児にお願いをする私。

ガマンしよう
ここでは彼がホームで
まだ私はアウェイだ。



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