溺愛されてもわからない!

「眉のカットしていいですか?」

「はい」

「綺麗な肌ね。何を使ってるの?」

「引っ越し前は向かいのおばさんが作ってたアロエ水と、今はレベルアップしてニベア……」

「ベースの前に日焼け止めしましょう」

人に振っておいて無視っすかフジタさん。
怖いかも。

「普段のお手入れはローションはたっぷりね。メイクはベースを丁寧につけて下さい。その方の色に合わせてラベンダー系とか使うけどお客様は普通の色で大丈夫。色が白いからアクセサリーとかメイクはゴールドよりシルバーが似合うかも。今日はハイライトとして下地にコンシーラーを入れてみますね。ファンデーションもリキッド系にして……」

フジタさんのトークと手がマシンガン。

そして完成されたのは

これ誰?
どこのお嬢様?

目がパッチリ
頬がふんわり
唇ピンクでプルプル

涙袋があるっ!
雑誌で見た女子力に必要な涙袋!

フジタマジック。

「すみれちゃん」

背中から聞こえた一夜の声が本気で驚いていて

いや声よりも
鏡越しで見た一夜の顔が、もっと本気で驚いていた。


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