溺愛されてもわからない!

「すごい可愛い」
驚いてから笑顔を見せ
私の隣に来て顔を寄せる。

鏡の中のツーショット。
綺麗な王子様と可愛いお姫様。
まだ自分と信じられない。

「女の子に教えてもらって、お手頃なスキンケア買ってきた。あとこんなしっかりしたメイクもいいけど普段使いならこっちの方がいいと思ってさ」

一夜がピンク色した紙袋から出したのは、ミネラルファンデーションとベース。まつ毛をクルリとするやつとフワフワパフ付のピンクチーク。それから淡いピンクのグロス。可愛い色。

「ごめんフジタさん。他社製品の安いやつだけど、使い方を教えてやって」

「いつもお世話になってる一夜さんのお願いですから気にせずに」

フジタさんは一夜が買って来てくれたメイク用品を手に取り、プロのテクを教えてくれた。
なるほどなるほど。大人の意見って素晴らしい。動画とっときゃよかった。

そしてイシイさんとフジタさんにお礼を言い
一夜が会計で万札を2枚出してお釣りをもらってるのを見て、小さくなってしまう。

「ごめんなさい。すごく高かった」

「安いよ。だからうちの父親に出させるから大丈夫」

「和彦さんに申し訳ないって、やっぱりどこかでバイト探して払う」

「すみれちゃん。たまに甘えたらいいよ」

「和彦さんに?」

「うん。寂しがってるよ彼」

彼……って。

「まだ和彦さんって呼んでるんだろ」

「一夜だって、椿さんって呼んでるでしょ」

「僕はいつでも呼べるよ『お母さん』って」

「そうなの?」

「割り切りは早い方だからね。それで丸く収まるのなら明日からでも呼べるよ」

サラッと言われてしまった。
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