溺愛されてもわからない!

「あ、ごめん何でもない。勉強がわかんなかっただけ」
適当に言って笑ったら
一夜は私に近寄り
私の身体を自分の胸元に入れ
後ろから密着。いい匂いする……じゃなくてオイっ!
接近しすぎ!
ここは制裁をと手に力を入れたら

「すみれちゃんって……バカ?」

「はい?」

「どうしてこれがわからないの?ここでどうしてこの答が出るの?ちゃんと例題読んでる?本気で書いてる?」

えっ?マジ?ないわー……そんな感じでブツブツ言いながら、私のプリントを奪って真剣に見る一夜。

「だってわかんない」

「いやこれ基本問題」

「むずかしい」

「いやこれスライムレベル」

「前の学校よりすんごい進んでるんだもん」

「これヤバいわ、ちょっとこっちやってみて」

一夜はそのプリントの中でも、基本中の基本的な優しそうな問題を指してくるけど

わからんもんは……わからん。

「テストそろそろだよね」

「うん」

「勉強しよう」

「へっ?」

「自分でもわかるだろ。このままじゃヤバいって」

「うん。都会の塾っていくらお金がかかるんだろうって悩んでた」

「教えてあげるから頑張ろう」

「いいの?ありがとう」

こんな間近で家庭教師がいたよ。やったぁ!
優しく教えてね。
わかりやすく優しく……おしえ……て……




一夜はドS野郎だった。


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