溺愛されてもわからない!

月夜君は半べそをかきながら
階段すぐにある部屋を指さした。

あそこか。

「お兄ちゃんのお名前は?」

「佐藤一夜(さとう いちや)」

いちや君。これもキラキラネームだな。
小学一年生決定。

「ありがとう。これからもよろし……」

「うっせーブース!ぶーす。ブスブス。すみれのドブス!田舎に帰れドドドブス」

幼稚園児は走って逃げて行ってしまった。

ドドドブス
効果音みたいな悪口。

くやしいーーー!!

いや
悔しさは心のバネさ。
月夜がダメなら一夜君に賭けよう。

仲良くなれるかな
小学一年生の男の子。
何の話をしようかな。

ゲームもよくわからないし
動物の話とか宇宙の話とか好きかな。
犬と猫のどっちが好き?とか
好きな本とかあるかな。

川とか近くにあるのなら
魚の取り方を教えてあげるけど、なさそうだし。
セミやクワガタ捕りも得意なんだけど
これもなさそうだし。
熊と出会った時の心構え……いらないね。

誠心誠意だな。
校長先生が教えてくれた
一番大切な物
【誠心誠意】って。

挑戦だ。

私は一夜君の部屋の扉をノックする。




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