溺愛されてもわからない!
「一夜君。こんばんは」
部屋の中は暗かった。
寝てるのかな。
「初めまして。すみれです。今日からよろしくお願いします」
返事はない。
やっぱ寝てるのかな。
邪魔しちゃ悪いか。
「仲良くして下さい。趣味とか教えてね。私は兄弟がいないから、弟ができて嬉しいです」
これなら上から目線かも
いや
最初が肝心。
生意気な幼稚園児の顔を思い出してそう思う。
「いいお姉ちゃんになれるように頑張るね。一緒に遊ぼうね」
それだけ言って
そっと扉を閉めようとしていたら
廊下からにょきっと人影。
いきなり手首を強い力でつかまれて
そのまま部屋に流れ込み
壁にドンされた。
「静かにして」
甘い声が耳元で囁き
柑橘系のコロンの香りが鼻をくすぐる。
月明かりが窓から射し込み
私を押さえつける男の姿を私に見せる。
背の高い男。
鍛えられた上半身は裸。
グレーのスェットを着て私を見下ろしていた。
くしゃっとしたウェーブのかかった茶色い髪。
スッとした鼻筋
切れ長の目
薄めの唇。
綺麗な顔。
いや
誰よあなた!