溺愛されてもわからない!

【イノシシは無事に校庭から出ましたが、まだ安心できないので学校から出ないようにして下さい】

校内放送に『あーぁ』って声を上げながら
私達は窓から離れてダラダラと席に戻る。

無事山に帰れたかな?
鍋の材料にならなくてよかったね。
美味しいけど。

ガラス越しに見えるのは
目に優しい緑の山。

山に囲まれた超田舎町。
イノシシ、サルは当たり前。
やたら広い畑ばかり広がる町。

町というか
ほぼ村。

不便でコンビニもないけど
水も野菜も美味しくて
人も優しい。
私はここで生まれて
ここに住む高校一年女子。

前中 すみれ(まえなか すみれ)
16歳になりたてホヤホヤ。

お父さんは私が生まれてすぐ
都会に働きに行って戻らぬ人になる
死んではいない……はず。

行方不明だからわかんない。
たぶんどこかで生きてるはず
お母さんと私より大切な人ができたそうで、戻って来ない。

都会には憧れるけど
お父さんに捨てられたトラウマもあるし。
私はここの高校を出て
どこかにコネで入って働いて
天然入ってるけど
優しいお母さんとずっと一緒に暮らしたい。

水と野菜が美味しくて
ゆっくり時間が流れるこの田舎で
ずっと平和に暮らしたい。







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