溺愛されてもわからない!
「組長もなるべくお子さん達と一緒に過ごそうと努力してますが、なかなか仕事が忙しくて。月夜さんは母親を知らずに育ったのでお気の毒です」
田中さんはそう言うけれど
ドドドブスは許せん。
そして
なんだか悪い人たちに目を付けられて、私の住んでる町に隠れに来て、お母さんと恋に落ちる。
詳しく聞いたら
その悪い人達っていうのは
警察の事だった。
警察が悪い人達ってどーよ。
常識が通じない世界。
「組長は誠実で優しくて男気があって、男の俺らから見ても完璧な男です。その組長が恋をして新しい幸せをつかもうとしてるんです。俺達は何があっても応援したいんです」
田中さんが熱く語る。
「椿姐さんとすみれお嬢さんが来るのを楽しみにしてました。この部屋も一生懸命に組長が用意しました。お願いします。組長を幸せにしてやって下さい!」
ふさふさとした金髪が床に着いた。
田中さんの髪を見て
春に見た田舎の麦畑を思い出す。
まだ24時間も経ってないのに
もう田舎が恋しい。
でも
お母さんの幸せそうな顔を見ると
ワガママも言えない。
とりあえず
私は『寝かせて下さい』って田中さんにお願いし、部屋を出て行ってもらってまたベッドに身体を沈める。
疲れた。
今は寝たい。
とにかく……寝かせて下さい。
疲れた。
田舎に帰りたい。
家に帰りたい。