溺愛されてもわからない!
『すみれ?もう大丈夫?』
少しかすれた声が耳に届く。雫さんも風邪ひいたかな。
「うん。もう大丈夫、月曜日から出るよ」
『テストだもね』
「そうなんだ。あのね……雫さん……あの、私は雫さんに聞いてもらいたい話があるんだ」
心臓を押さえながら
勇気を出して雫さんに言うと
『私もすみれに電話しようと思ってたの、話を聞いてもらいたくて……私、昨日ね夢に言ったの』
そんな言葉が返ってきた。
夢に言った?
何を?
『学校が終わって、いつも無表情な夢が珍しく嬉しそうな顔していたから、気になって夢の席に行ったの。なんでかわからないけど、クラスのみんなも近くにいなくて、奇跡的に教室の後ろの方でツーショットになったの』
雫さんの声が興奮してるのか泣いているのか
電話ではよくわからないけど
いつもと違う。
『だから……自分でもよくわかんないけど、急に夢に自分の気持ちを伝えたくなって、夢に言ったの【私は夢がずっと好きだった。彼女にしてほしい】って』
あぁこれは
雫さんは泣いてる声。
細い肩が震えて泣いている様子が目に浮かぶ。
『そしたらね【ごめん。好きな子がいる】って断られたの。これからその子に会いに行くんだって』
私の事だ。
『せっかく、すみれに応援してもらったのにゴメンね。悔しいよ……誰なんだろう……すごく悔しいくて悲しい』
それからしばらく
雫さんの言葉は出てこなくて
私は電話越しに雫さんの泣き声を聞いていた。